ナガイ ヨシミ   NAGAI YOSHIMI
  永井 由巳
   所属   関西医科大学  眼科学講座
   職種   准教授
言語種別 日本語
種別 その他
表題 Ⅲ.後眼部疾患 ① 網膜・硝子体疾患 G.網膜色素上皮症 3地図上(匐行性)脈絡膜炎
書名 眼科疾患 最新の治療
編者名 大橋裕一, 白神史雄 編集
版・巻・頁 218
出版社株式会社 南光堂
出版地
(都市, 国名)
東京
著者・共著者 永井由巳
発行年月 2013/06
概要 疾患の解説
20~50歳が好発年齢で、発症時期には左右差があるが、両眼発症のことが多い炎症性疾患である。頻度は後部ぶどう膜炎の5%未満とされている。原因は感染や自己免疫疾患などが考えられている1)が真相は不明である。病態は、脈絡毛細管板への導入血管の血管炎による脈絡毛細管板の循環障害と考えられている。脈絡毛細管板の閉塞により、二次的に網膜色素上皮が障害され、最終的には特徴的な地図状を呈する網脈絡膜萎縮病巣を形成する2,3)。時に、脈絡膜新生血管を発生することもある。
自覚症状としては、急性期には視力低下や霧視、中心暗点を認め、進行すると萎縮病巣に一致した視野欠損を生じる。萎縮を生じる場所によって視力予後は左右され、中心窩を含んだ萎縮病巣をみる時は視力不良となる。発症時、多くの症例で視神経乳頭近傍から眼底後極部の網膜外層に黄白色滲出班を認める。時に視神経乳頭縁から発症することもあり、視神経乳頭炎を併発することもある。経過とともに病巣の中央部は網脈絡膜萎縮を呈し、萎縮巣の辺縁に脈絡膜毛細管板の小葉単位で虫食い状に病巣が拡大する。
診断に当たっては、フルオレセイン蛍光造影(FA)、インドシアニングリーン蛍光造影(IA)が有用である。FAでは、急性期の活動性病巣は早期には脈絡膜小葉への流入障害により低蛍光を示すが、後期には強い過蛍光を示す(逆転現象)。IAでも活動性病巣はFA同様、早期には低蛍光を示し、後期には淡い過蛍光を示す。萎縮病巣は、造影全期間を通して低蛍光を示す。
2) 治療
 炎症性疾患と考えられているので、急性期(活動性)には消炎を目的とした副腎ステロイド剤の投与を行う。投与は全身投与か、眼局所の濃度を高めるためテノン嚢下注射や硝子体内投与を行う。
≪処方例≫ ・プレドニゾロン換算 30~100mgの全身投与
・トリアムシノロンアセトニド(ケナコルト™)20mgのテノン嚢下注射、硝子体内注射
眼底の黄白色滲出班が消退し、FAの蛍光漏出が軽減して病巣の活動性を認めなくなったらステロイド剤を減量するが、漸減中に再燃を示すことも多く、再度増量を行うことも多い。