ナガヌマ マコト   NAGANUMA MAKOTO
  長沼 誠
   所属   関西医科大学  内科学第三講座
   職種   教授
言語種別 日本語
発表タイトル FITとLRGの併用による寛解期潰瘍性大腸炎の再燃予測の検討
会議名 第109回日本消化器病学会総会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 シンポジウム・ワークショップ パネル(公募)
発表者・共同発表者◎本澤有介, 中村尚広, 長沼誠
発表年月日 2023/04/07
国名 日本
開催地
(都市, 国名)
長崎県長崎市(出島メッセ長崎)
開催期間 2023/04/06~2023/04/08
学会抄録 第109回日本消化病学会総会 プログラム・抄録集 A60
概要 【背景】潰瘍性大腸炎(UC)では各種治療薬の登場により治療目標が臨床的寛解から内視鏡的寛解へと移行してきている.しかしながら,内視鏡評価はその侵襲性からも頻回での評価は困難であり,各種バイオマーカーによる評価の重要性が高まっている.炎症評価としてロイシンリッチa2グリコプロテイン(LRG),便中カルプロテクチン(Fcal),免疫学的便潜血検査(FIT)等がUCの再燃予測マーカーとして報告されている.どの検査法も非侵襲的であるがLRG,Fcalに関しては判定に数日を要し,治療反映が難しい事がある.一方FITは即日判定可能で,Fcalに比較して採取が簡便であり,既に多くの医療機関にて導入されている.そこで今回,FITにLRGによる評価を加えたUCの長期予後について検討した.
【方法】対象は2021年1月より2022年6月まで当院にて加療中の臨床的寛解期UC 110例.pMayo score 2以下を臨床的寛解と定義し,寛解評価時にFITおよびLRGを測定.FIT 100mg/mL,LRG 16μg/mL以下をそれぞれの陰性群とし,予後との関連について解析を行った.
【結果】1)110例中再燃は27例(24.5%),累積寛解維持率は57.1%であった.2)FITの検討では再燃は陰性群76例中14例(18.4%),陽性群34例中13例(38.2%)となり,累積寛解維持率は陰性群56.9%,陽性群49.3%となり陰性群で有意に高かった(p=0.041).3)一方,LRGの検討では再燃は陰性群103例中25例(32.1%),陽性群7例中2例(28.6%)となり,累積寛解維持率に有意な際は認められなかった.この為,LRGについて再燃群と非再燃群に関してROC曲線を用いた解析を行った所,10μg/mL以下がcut off値として推定された.5)これらの結果をもとにFITにLRG 10μg/mL以下による評価を加えた検討では,再燃は両マーカー値とも陰性であった35例中3例(8.6%),陽性群は75例中24例(32.0%)となり,陰性群で有意に再燃率が低かった(p=0.008).また,累積寛解維持率は陰性群で有意に高くなり(89.2% vs 45.0%,p=0.008),FIT単独より良好であった.
【結論】FITをベースにLRGを加えた手法はFIT単独より高い寛解期維率を呈した.FITの迅速評価にLRG解析を加える事で長期的な再燃予測が可能になると思われた.