ワテ レイカ   WATE REIKA
  和手 麗香
   所属   関西医科大学  神経内科学講座
   職種   非常勤講師
言語種別 日本語
発表タイトル 特異なMRI画像所見を認めたWernicke脳症の一例
会議名 OSK
学会区分 研究会
発表形式 口頭
発表者・共同発表者◎西井誠, 新出明代, 和手麗香, 中野智, 伊東秀文, 日下博文
発表年月日 2006/12
開催地
(都市, 国名)
京都市
概要 【症例】
 症例は,発症時までADLの自立した82歳女性.3日ほどの経過で歩行不能となり発症後7日目に当科受診,入院となった.入院時,意識は清明だが眼球は両眼外側上方に固定,両側顔面神経麻痺,四肢深部腱反射消失,四肢体幹失調を認め起立歩行不能であったが明らかな筋力低下は認めなかった.頭部MRI 拡散強調画像にて第3脳室周囲,視床内側,中脳水道,小脳虫部が高信号を示している疑いがあったが,入院時には同変化は有意なものと考えなかった.神経伝導速度検査は軸索障害型の多発神経障害を認めた.症状よりFisher症候群と考えたが入院翌日,両下肢の筋力低下が進行したことから免疫グロブリン大量静注療法を開始した.
 入院第3病日朝より呼びかけに対する反応が乏しくなり,夕刻にはJCSⅢ−300と明らかな意識レベルの低下を呈したため、Wernicke脳症を疑いビタミンB1製剤(アリナミンF100mg)を静注したところ、 30分後より刺激に反応するようになり1時間後には会話可能となった.外眼筋麻痺,顔面神経麻痺,四肢体幹失調はWernicke脳症に伴う症状であり腱反射消失,四肢筋力低下は末梢神経障害(Beri Beri)の合併と考えた.
 後に,入院時の血清ビタミンB1値は1.4μg/dlと低値で合ったことが判明した.ビタミンB1製剤投与にて症状が軽快したこと,小脳虫部に認めた拡散強調・FLAIR・T2画像の高信号は治療経過と共に消失したことよりWernicke脳症に伴う画像変化であると考えた.
 Wernicke脳症では典型的には第3脳室周囲,視床内側,中脳水道,第4脳室底部,乳頭体がMRI DWIで高信号を示す.本例のように急性期Wernicke脳症で小脳虫部のMRI画像の異常を報告したものは少ない.文献的考察を加え報告する.