キタデ ヒロアキ   KITADE HIROAKI
  北出 浩章
   所属   関西医科大学  胆膵外科学講座
   職種   准教授
言語種別 日本語
発表タイトル IFN治療後にSVRとなったC型慢性肝炎症例におけるリン酸化Smad3の発癌予測因子としての有用性
会議名 第46回 日本肝臓学会総会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎井口亮輔, 松崎恒一, 川村梨那子, 梅原秀人, 池田耕造, 吉田勝紀, 福島愼太朗, 関 寿人, 北出浩章, 海堀昌樹, 權 雅憲, 岡崎和一
発表年月日 2010/05
開催地
(都市, 国名)
山形市
学会抄録 肝臓 51(1),2010 
概要 背景と目的>近年IFN治療を行いSVRとなった患者でも肝細胞癌が発癌したとの報告が散見される。これまで我々は、慢性ウイルス性肝炎の癌化過程において、肝炎ウイルス持続感染に伴う慢性炎症によりTGF-βシグナル伝達が、C末端部リン酸化Smad3 (pSmad3C) を介する癌抑制シグナルからリンカー部リン酸化Smad3 (pSmad3L) を介する癌化シグナルへとシフトしていると報告した(Hepatology 2009;49:1203-17, Cancer Res 2009;69:5321-30, Hepatology 2007;46:48-57, Cancer Res 2007;67:5090-6)。そこでC型慢性肝炎患者のSVR後に発癌した症例と、発癌していない症例のIFN治療前後の肝組織を用い、pSmad3CとpSmad3Lが発癌予測因子になりうるかを検討した。
方法>症例:IFN治療を行いSVRとなったC型慢性肝炎患者11人 (平均年齢:65.2歳、性別 男性:6人 女性:5人、治療前肝組織 F1:4人、F2:7人、SVR後平均観察期間:42.3ヶ月) ならびにSVR後に発癌した5例(平均年齢:65.8歳、性別 男性:5人 、治療前肝組織 F1:2人、F2:3人、SVR後発癌までの平均期間:88ヶ月)。これら患者の治療前後に行った肝生検組織を用いて、リン酸化Smad3および標的遺伝子 (c-Myc, p21) の免疫染色を行い、治療前後でのpSmad3CとpSmad3L経路の活性化状態を調べ、比較検討した。
結果>IFN治療前の肝組織では、背景肝の進行度に比してpSmad3L/c-Mycが優位になり、pSmad3C/p21が減弱していた。SVR後2年経過しても発癌していない症例では、pSmad3L/c-Myc が減弱し、pSmad3C/p21 は増加していた。しかしSVR後に発癌した症例では、治療後でも高いpSmad3L/c-Mycを維持し、pSmad3C/p21は抑制されたままであった。
考察>IFN治療を行いSVRとなったC型慢性肝炎患者の発癌危険因子はSVR後発癌の危険因子として、男性、高齢、肝線維化の進行、糖尿病、アルコール、NASH、occult HBV、occult HCVなど様々な因子が示唆されている。C型慢性肝炎患者の多くは、IFN 治療によってpSmad3L を介する癌化シグナルがpSmad3C を介する癌抑制シグナルに回帰した。しかしSVR後にpSmad3Lを介する高発癌状態が持続する場合、発癌リスクは維持されると考えられた。よってSVR後に2回目の肝生検を行い、治療前後のpSmad3CとpSmad3Lを比較検討することは、SVR後の発癌を予測するうえで有用と思われた。