ヤクシジ ユウスケ   YAKUSHIJI YUSUKE
  藥師寺 祐介
   所属   関西医科大学  神経内科学講座
   職種   教授
言語種別 日本語
発表タイトル 高血圧性脳出血: 疫学的変遷と今後の展望
会議名 第45回日本脳卒中学会学術集会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 特別講演・招待講演など
発表者・共同発表者◎藥師寺祐介, 鈴山耕平, 井手俊宏, 江里口誠, 原英夫
発表年月日 2020/08/25
開催地
(都市, 国名)
Web
概要 本邦の脳卒中史を振り返ると,1965年の時点で脳卒中死亡率が世界一高く,その中でも脳出血 死亡率が非常に高かった.その後の,高血圧の認知,降圧剤の開発,塩分摂取量の改善に伴い, 脳出血死亡率は劇的に低下した.これらの予防効果からは,致死的脳出血の頻度低下は高血圧 性脳出血の発症率低下を意味しているであろう.1980年代まで続いた本邦の脳出血死亡率の低 下は,諸先輩医師方の貢献の賜物であるが,その後横ばいになってきている.これは高血圧介 入による脳出血の発症率低減の限界を見ているのではなく,抗血栓療法下での脳出血の増加, 高齢化社会での脳アミロイド血管症(cerebral amyloid angiopathy: CAA)関連脳出血の増加な どが加わった結果と思われる.抗血栓療法下での脳出血は,抗血小板療法の至適容量のエビデ ンスやDOACの出現により,増加に歯止めがかかると期待されるが,未だにMRI上の白質病変 や無症候性ラクナ等を根拠に不適切な抗血栓薬が使用され,高血圧治療は見逃されたまま,脳 出血を生じる不幸な例が後を絶たない.白質病変や無症候性ラクナに代表される虚血性病変の 存在は,脳微小出血を代表とした出血性病理の共存を示唆する.この点については,我々,脳 ドック学会・脳卒中学会が啓蒙に力を注ぐべき事項である.CAA関連脳出血は脳アミロイドβ蛋 白を標的とした抗体療法等の分子標的治療の開発が期待され,そのために臨床的に活用可能な Boston基準やEdinburg基準などの画像ベースの診断基準が普及してきた.一方で高血圧性では, “いわゆる高血圧性脳出血”と形容されるべく,明確な診断基準が設けられていない.この点は CAAに大きく遅れをとっており,その予防・治療を研究する我々脳卒中医の課題である.