ナガイ ヨシミ   NAGAI YOSHIMI
  永井 由巳
   所属   関西医科大学  眼科学講座
   職種   准教授
言語種別 日本語
発表タイトル シンポジウム:健康へのレーザー医学の貢献 「眼底疾患における光学的診断、治療のトレンド」
会議名 第25回日本レーザー医学会 関西地方会
学会区分 地方会
発表形式 口頭
発表者・共同発表者◎永井由巳
発表年月日 2012/07
開催地
(都市, 国名)
大阪
概要 眼科医にとって眼底検査を行うことは日常診療の一部である。眼底所見を解釈するには病巣の状態を組織学的に考察することが重要である。眼底診察を行う上で我々は細隙灯顕微鏡と眼底観察用コンタクトレンズとを用いて詳細に観察するが、網膜は生検不能なため病理組織像を得る機会は殆どない。
 近赤外光を用いて非侵襲的に網膜の断面像を光学顕微鏡切片の如く詳細に描出することができる光干渉断層計(optical coherence tomography)が1997年に日本に導入されてから、眼底疾患、特に中心視力に関わる黄斑部疾患の診療で欠かせないものとなった。導入当初は20μmであった解像度が、現在市販されている最新器では3μmとより網膜の層構造や脈絡膜画像が病理組織に近いものとなった。その結果、診断はもとより治療効果の判断や、視機能の予後を推測することも可能となり、眼底診断学を専門としない眼科医にとっても診療上欠かせない機器となりつつある。
網膜裂孔や糖尿病網膜症、網膜血管閉塞症、中心性漿液性脈絡網膜症、加齢黄斑変性などの様々な眼底疾患の治療で、網膜光凝固はスタンダードな治療としてよく行われている。レーザー凝固を行う上で、より効果的でより合併症を防止するため、用いるレーザー光の波長の異なる青色光、黄色光、赤色光を使い分けるようになり、これらの波長を全て装備したマルチカラーレーザー凝固装置が一般的となっている。
また、網膜光凝固時に伴う患者の疼痛を緩和するため、1回で数十発の同時照射ができ、凝固時間も従来の約1/10と短い、パターンスキャンレーザー装置も開発され普及しつつある。
 加齢黄斑変性に対する直接レーザー凝固は、視力に影響がない中心窩外に広がる脈絡膜新生血管に対してのみ行われているが、2004年に国内に導入された光線力学療法(photodynamic therapy;PDT)により中心窩下の脈絡膜新生血管への直接治療が可能となった。この治療は、光感受性物質であるベルテポルフィンを静脈内に投与し、投与開始15分後に波長865nmの非発熱レーザーを照射することで、ベルテポルフィンが光化学反応を起こして活性酸素を発生させ、新生血管の内皮を傷害して閉塞させる。この治療により、加齢黄斑変性の視力を維持・改善が可能にになった。
 今回のシンポジウムでは、この10年あまりで眼底疾患の診療に関して大きく進歩した、レーザー診断学、レーザー治療学について紹介、解説する。